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夏のイベント レポート
宮崎支部
 宮崎支部は8月24日(土)、宮崎市民プラザを会場に、第16回若者たちの集いを「生涯教育 生きる意味を問う―考えよう 私たちの未来・地球の未来」をテーマに掲げ、中学生から20代まで計20名と支部メンバー、併せて36名の参加で行った。
 同支部は、夏休みに入る前に学生たちに呼びかけたいと、例年より早く「ごあんない」を作成したい旨を本部に伝え、テーマ、開催趣旨の案を提出していた。
 同支部はここ数年、同じテーマでこの集いを持ち、提出された案を見ると、今年も同じであった。本部はその理由を支部に尋ねた。
 支部からは「毎年、まずテーマから考えるが、話し合うなかで、やはり若者たちのことを考えると、このテーマに行き着いた」との回答だった。そのように一つひとつ意識や動機を検証するなかで趣旨を練り上げ、「ごあんない」を作成し、若者たちへの参加呼びかけを始めた。
 しかし開催日が近づいても、申し込みは7名から動かなかった。メンバー全員で呼びかけてなぜ集まらないのか、責任者は自分の課題として理事に指導を求めた。呼びかけ状況の話をするなかで責任者は「呼びかけを始めるのが一月遅れてますから」と口にした。それは最初に「ごあんない」案を本部に提出した際、全国から集まる他の膨大な書類に紛れ込み、本部の検討が遅れる、ということがあったからだった。この準備の出遅れが、参加者が集まらない理由の一つだという本部を批判する意識が責任者にはあった。
 参加者が集まらない現状をそのことのせいにしていると見た理事は「『人生に触れ合うすべての条件は自己学習の教材である』との原則に立ち、本部支部双方の課題にすることが大事です。本部の不始末は反省しお詫びします。その上であなたにとっての課題は何ですか?」と問いかけた。 
 責任者はその問いによって「これは自分自身の課題なのだ」と180度意識を変えた。
 それからも、準備過程で起こるさまざまな問題を課題として指導を求めつつ呼びかけを続け、結果20名の参加となった。
 当日、同支部副責任者の綾部さんの開会挨拶、DVD「第10回記念生涯教育国際フォーラム  未来創造学としての生涯教育―21世紀の人間復活―」映写のあと、同支部の小川さんが母親の立場から提言を行った。
 小川さんは、今、若者たちを中心に社会全体に広がるネット依存問題が身近にも迫っているなかで「そもそも依存とは何か?」と改めて自己に問い直した。「寂しさや辛さ、悲しみ、自分の心に充たされないものを忘れさせてくれるもの、それがネットだったり、薬物や賭け事だったりする。私のなかにも現実から目を背け、厳しさ、辛さから逃げたい、他に『依存』したい気持ちが見えた。『人間の存在そのものが尊い』と学び、自分の価値に気づくことが依存からの脱却であり、私たちの未来を啓くこと」と提言した。
 その提言を承け、午前中は全体討議、午後は三つのグループにわかれて討議を行った。
 ほとんどの中高生たちが、SNSの「ライン」を利用しているということだった。そして、「一度それを見ると履歴が残るので、反応せざるを得なくなり、悪循環をくり返す」といった、実際にはまっていく気持ちなどが語られ、若者たちは真剣に話し合った。
 一日を通して、責任者の矢野さんは「今、ほんとうにネット社会なのだと実感しました。その社会のなかで、自分を見失わないことが大事だと思います。そして自分も他者も大切にして、思いやりや痛みを感じる心を失ってはいけない、ということを今日確認できたと思います」と語った。
 参加者からは「提言を聞き、私はネットには依存していないが、自分が依りやすいものに逃げるのは同じだと気づいた」「自分もネットに依存していると思った」「提言を聞き、大人も悩んでいると思ったら、私も悩んでいいのだと思えた」などの感想があった。
 最後に同支部の山成さんが閉会の挨拶をし、幕を閉じた。

群馬支部
 群馬支部は8月7日(水)、県生涯学習センターを会場に第7回生涯教育懇談会を「生涯教育 家庭の価値と役割―いじめの問題の背景を探る―」のテーマのもとに開催。市議会議員、元県会議員、教育長、元教育長、教師、市生涯学習センター社会教育主事、県ユネスコ協会会長、行政センター所長、保育士、介護士、民生委員、身障者施設後援会長、観光協会理事他24名が参加した。
 午前中はDVD「野村生涯教育センターのあゆみ」を上映後、永田さんが提言を行った。
 永田さんは高校、大学共に女子校で学び、先生たちから「男のために夢を諦めるな、家庭のために仕事を犠牲にするな」と繰り返し言われ、「その通りだ、自分のキャリアのために精一杯がんばろう」「家庭に価値などない、専業主婦でいることは人生の無駄」と思ってきた、と述べた。
 中学の教師となり生徒指導に追われる毎日だった永田さんは、生徒たちと接していて「家庭が、親が、子どもに与える影響の大きさを感じていた」と述べ、自分と母親との関係をふり返り「幼い頃、母と祖母の関係がよくないと感じ、信頼できず、家族の機嫌を損ねないように良い子で通し、自分の気持ちは伝えず、決めつけた見方で親を見て繋がりを切っていた」と語った。
 そして結婚して出産し、子どもが3カ月のとき、網膜芽細胞腫という小児癌であることを告げられた永田さんは、身体が硬直して心が裂けるような感覚を味わった。「しっかりしなくてはと自分に言い聞かせ、次の瞬間、私にはこの学びがあるが、夫は大丈夫かな、と思ったことに驚いた。母親の影響で子どもの頃からふれていたこの学びが、極限の状態の自分を支えてくれていると気づいた」と語った。そして、眼球摘出手術を行い、不幸のどん底にいるような気持ちの永田さんだったが、子どもの病気を通し「お金も何も要らないから、命だけ助かってほしい」と心から願い、「何が本当の価値かを学ぶことができた」と述べ、「いじめの問題の背景にある家庭、家族がどうあるか、生命を生み出す自分がどうあるか、命は本来繋がっているのだから自分が繋がっていく、それが根本的な解決になる」と提言した。
 その後、全体討議に入り「能力のある女性が自分の力を社会で試したいと思うのは自然なことだが、家庭の教育力が低下し、離婚率の上昇にも繋がっている。社会全体がどこを目指したらいいのか」(元県議)との発言から、活発な討議が展開した。
 「結婚前は、結婚、出産は選択肢を狭めると思っていたが、今は逆に広がっていると実感している」(主婦) 「託児所で勤務しているが、子どもは母親に聞いてもらいたい、抱きしめてもらいたいと思っている。私たちでは埋められない。女性の自立も考えるが子どもの心は一体だれが育てるのだろう」(保育士) 「ある時『三つ子の魂百まで』と口にしたら、働く女性は責められていると思うので気をつけた方がいいと言われ驚いた」(元県議) 「仕事に復帰しようと思っているが自分の価値観がどこへ行ってしまうか不安になる」(提言者) 「仕事をしながら愛情を注ぐにはどうしたらいいのか、毎日価値観をふり返ることなのでは」(市議会議員) こうした意見が続いた。
 午後は、いじめ問題から家族関係へと議論が発展していき、「夫に腹が立ち、お風呂上がりにバスタオルと言われても無視し、濡れて困ってる夫を見てすっきりしている自分がある」(主婦) 「舅姑に対し間尺が合わないと悪意がわいてくる」(主婦) といった本音の発言が続き、それに対し「自分の価値がほんとうにわかれば、相手のことも認められる」(市議会議員) といった発言もあり、それぞれが足もとの人間関係での自分の意識の中に、いじめの原因があることを認識した。
 最後に支部責任者の佐野さんは「価値観は揺れるものだが、命そのものの価値、その命の生まれ育つ家庭の価値と役割、それに目を開いていくことが大事」と述べ、懇談をしめくくった。
 最後まで途切れることなく活発に意見が出され、充実した一日となった。
 
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